【眠れぬ夜は】
殆どの隊士が明日の仕事に備え寝付く頃、まだ明かりの灯る部屋があった。眠る隊士たちを気遣ってか電灯ではなく、薄暗い部屋の中で行灯の僅かな明かりをたよりに土方は書類に目を通していた。
事務処理は主に土方の仕事になっていた。
以前は近藤も書類整理などの事務処理をしていいたが、あまりにも雑で要領が悪いとのことで土方が行うことになったのだ。
しかし、それ以外にも仕事は山ほどあるのでついつい後回しにしてしまい、皆が寝静まった頃になることもしばしば。
大方の目処がついたので土方は書類を机の上に放り、数時間前に山崎が淹れてくれたお茶に口をつけるがそれはもう冷めてしまっていた。
「……まずい」
そのまま中身の残っている湯飲みを置き、再び書類を手に取った。
ぎしっ
廊下の軋む音に反応し視線を障子のほうへとやる。
障子に映る人影に気付いた土方は書類を元に戻し、溜息とともに立ち上がり障子に手を掛けた。
「――何しに来たんだ…総悟?」
土方の言葉通り障子の向こう側には枕を抱えた寝巻き姿の沖田が立っていた。
「…寒ぃんだか早く中に入れろコノヤロー」
沖田は土方の問いには答えず、ぐいっと土方の体を押しやり部屋に置かれている火鉢のほうへ近づき暖をとった。
これには土方も唖然としてただただ沖田の様子を眺め、冷たい風が頬を撫でていきふっと我に返り開けっ放しだった障子を閉めた。ここのところ仕事詰めで疲れが溜まっているようだ。
「俺まだ仕事残ってんだけど…こんな夜更けに何の用だ?」
書類が散乱している机の上から煙草とライターを探り出し、それに火を点けた。
そして灰皿片手に沖田の隣に腰を落とした。
「…用がなけりゃ来ちゃいけねェんですかィ?」
可愛らしく上目遣いで土方を見詰めるがこれも沖田の計算の内。しかし、頭にはピンっとはねた寝癖。
「――…悪かねぇけど、時間考えろよ」
沖田の上目遣いに内心ドキッとしたが、それを表には出さず素っ気ない態度で沖田の寝癖に手を伸ばし整える。
「でも、アンタはまだ起きてるだろ?」
窘めるかのように土方を睨みつける。
「仕方ないだろ…仕事放り出す訳にもいかねーんだから」
折角整えた頭を今度はぐりぐりと撫で、紫煙とともに土方は溜息をつく。短くなった煙草は灰皿に押し付けて揉み消した。
「そんなの明日にしちまえよ」
土方の手に自分の手を添わし頬へと寄せる。節だった長い指と大きな掌には剣胼胝が。そして指先には僅かな煙草の匂い。
「どうした?」
いつになく甘えた仕草の沖田にくすぐったい気分になり優しく頬を撫でる。
「寝れねェんでさァ だから、一緒に寝てくだせェ」
沖田は目を伏せ、土方に凭れ掛かった。
「生憎だが俺はまだ……」
仕事がある、と言おうとした土方の唇を塞いだ。でもそれは一瞬の出来事。
「仕事仕事って…体に鞭打ってやるもんでもねェでしょが!」
沖田は土方の頭を抱き寄せ、髪を撫ぜた。
「……」
突然のことに土方は沖田の為すまま、身じろぎせずにいた。
「ほら、早く寝やしょう?」
ちゅっと軽い音を立てて土方の額にキスを落とすと沖田は布団を敷き始めた。その姿は土方はただ見ていることしか出来ずにいた。
全て沖田のペースで事が進んでいき、疲れきった土方の頭では処理に時間がかかるようだ。
「…土方さん?」
「−!?」
土方が気付いた頃には布団もきちんと敷かれていて、乱雑に放られていた書類も何処となくきれいに整理されていた。
「さァ、準備できやしたぜ」
「あ、あぁ…」
沖田は呆ける土方の腕を引き、布団の中へと誘い入れた。
いつもと違う立場に戸惑う仕草を見せる土方に沖田は堪えきれず笑い出した。
「俺ァ別に土方さんを取って喰いやしやせんぜ?てか、今日はそんな気分じゃありやせんし」
「…はぁ?」
土方の間の抜けた返事にくすっと笑い、また土方の頭を抱き寄せた。
「今日の土方さんは俺の抱きつき枕でィ」
「なんだよそれ!?」
突拍子のない沖田の発言に土方もいつものペースに戻った。
「だから大人しく寝ればいいんでさァ」
「あぁ、そうかよ…」
沖田の訳の分からない言い分に納得し、大人しく身を委ねる。
耳を寄せれば聞こえる沖田の鼓動。
触れれば感じる体温。
「おやすみなせェ」
たまには甘やかされるのもいいものだと思い、土方は眠りについた。
『子守唄は君の心音』
おまけ
このまま沖田の腕の中で眠りにつくはずだったのだが、何分自分勝手な自由な性格の沖田のことだから。
「ねェ、やっぱりこの位置変えやしょう」
もう半ば意識を手放し始めた頃にこの発言。
「――…なんだよ?」
手放しかけた意識も元に戻ってくる。
「なんだか落ち着かねェでさァ」
もじもじと身を捩って布団の中に潜ろうとする。
「……?」
「やっぱ俺ァ土方さんの腕枕じゃなきゃダメなんでさァ」
「!?」
そっと熱っぽく土方の耳元で囁く沖田は策士な訳で、それに見事に土方は嵌まる。
「し、仕方ねぇな〜 ほら、」
土方は体をずらし、沖田に腕を差し出す。
「へい」
沖田も土方の腕に頭を置く。
土方はぐいっと沖田の体を寄せる。
「へへっ、煙草臭ェや…」
そう言いながらも沖田は土方の胸板に頬を摺り寄せる。
「うるせー。抱き枕は大人しく寝やがれ」
「へ〜い おやすみ」
「あぁ」
やっぱり甘やかされるほうが落ち着くなと思った沖田なのでした。
漸く二人は眠りについた。
翌朝、土方を起こしに部屋を訪ねた山崎がボコられるのはまた別のお話。
『きみの脈拍を枕に眠る』
終わり
テーマ:『きみの脈拍を枕に眠る』/『子守唄は君の心音』
配布:[酸性キャンディー] http://www.ictv.ne.jp/~dusk_017/
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お友達の亜月ちゃんに頂きました
何気なく土沖書いてよーって言ったらアッサリと!
彼女は神です!
まさに私の好みの土沖さんです^^
あまり銀魂詳しくないみたいだったのにごめんなさいっ!
ヒバリ頑張りますv